中小運輸業(鉄道業、道路旅客運送業、道路貨物運送業、水運業、航空運送業など旅客及び貨物に関する産業)においても、「売上不振」を経営課題と認識する企業の割合が最も多い(注)。
運輸業の中でも企業数が最も多い一般貨物自動車運送業について見ると、バブル崩壊後も輸送量が安定的に推移しているが(第213-3図)、新規参入が活発になっているため事業収入は横ばいで推移している(第213-4図)。こうした状況の下、「業界の常識」を破り他社との差別化に成功している事例を紹介する。
第213-3図 自動車貨物輸送量の推移
第213-4図 トラック事業収入の推移
<事例 業界の常識を破り、宅配便の規格外商品の輸送を外注で取り扱うことで成長を遂げた企業>
A社(大阪府)は、宅配便の規格外となるような商品の運送を、一定のノウハウを備えたドライバーに委託することで成長を遂げた運送会社である。
同社社長は宅配便会社で営業職に従事した後、荷主を探して知人の運送業者に運送業務を斡旋する事業を開始した。当初は人脈に頼って営業していたが、新聞の求人広告で配送要員を募集する企業が多いことに気付き、顧客になるのではと考えて営業を始めた。
この営業を通じて、配送要員を募集する企業には、多くの場合、宅配便会社の規格外となる商品を運送するニーズがあることが分かった。ただし、こうした規格外の商品運送には一定のノウハウが必要であることが多い。例えば、家電製品の場合、運送した後に梱包を解いて設置し、アンテナを接続するなど付帯的なサービスが求められる。
そこで同社は、宅配便の規格外となる商品の運送業務を受注し、こうした商品の運送ノウハウを備えているドライバー又はその希望者に運送業務を委託することにした。
規格外商品の運送についてはこれまで外注することができないというのが半ば常識であったため、同社の評判は広まり、多くのドライバーと委託契約することで次第に運送対象とする商品を広げ、業績を拡大している。
※注 国民生活金融公庫「全国小企業動向調査」(平成12年12月調査)によれば、小規模運輸業(従業者数30人未満)の抱える経営課題としては、「売上不振」が39.2%と最も多く、「利益減少」が36.5%でこれに続く。
中小企業庁ホームページより
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