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建設業

近年の中小建設業の最大の経営課題は「官公需要の停滞」であり(前掲第211-1図)、この現象はかなり長期的に継続している。建設業の市場規模を見ると、平成4年以降減少傾向にある(第213-2図)。他方、建設業許可業者数は着実に増加しており、平成11年3月末現在の業者数は約58万6,000業者と過去最高を記録した。
市場が成熟化する一方で業者数が増加した結果、建設業の収益状況は低下しつつある。中小企業庁「中小企業の経営指標」により、建設業の完成工事高対営業利益率を見ると、平成5年度は2.6%であったが、平成6年度以降は低下傾向にあり、平成11年度は0.3%にまで低下している。また、東京商工リサーチの調査によれば、平成12年の建設業の倒産件数は6,214社と全体の33%を占め、企業数、国内総生産に占める建設業のウエイトと比べて高い水準にある。
このように長期化している需要の停滞を踏まえ、ここでは民間賃貸住宅市場や外資系企業のオフィス・工場の建設受注など、新たな市場の開拓に取り組み成果を挙げている事例を紹介する。

第213-2図 完成工事高の推移

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<事例 民間賃貸住宅市場など新たな市場の開拓により業績を伸長>

中堅建設会社A社(新潟県、従業員数108人)は、従来売上を官庁からの土木建設受注に依存していたが、地方公共団体の財政難により官庁の土木・建築需要が低迷することを予想し、民間賃貸住宅建設など新たな市場を開拓して業績を伸ばしている。
同社は、平成7年度から、遊休地の所有者に対して、遊休地に同社が賃貸住宅を建設し、遊休地所有者に賃貸住宅の運営を提案することを開始した。この民間賃貸住宅の建設は、平成8年度から同社の売上の向上に寄与し始めている。
また、同社は、医療・福祉機関と連携して、県内ではこれまで他の企業があまり取り組んでこなかった有料老人ホームやグループホームの建設を積極的に行っている。
さらに、同社は、遊休地の所有者と県内外の出店(テナント)希望企業を仲介して、建設案件を獲得している。
このように新しい市場を開拓する取組により、同社の売上高は平成10年度以降拡大を続けている。
同社社長は、「今後、新築・中古住宅に関する価格・品質等に関する情報提供が行われ、米国のようにこれらデータを消費者が自由に入手することができるようになれば、新規マーケットが開拓されビジネスチャンスが広がる。」としている。

<事例 資材の最適調達を通じて欧米流のプロジェクト・マネジメントを習得し、
対日進出企業の発注を拡大した建築設計事務所>

建築設計事務所のA社(東京都、従業員数5人)は、国内に限らず海外からも資材を低価格で調達し合理的な工事費でオフィス・店舗を設計・施工してきたが、海外からの資材調達を通じて欧米流のプロジェクト・マネジメントを習得し、対日進出企業のオフィスや工場の建設案件を獲得してきた。
同社は、ある外国企業から「ガラスを1枚だけにすると冷暖房費がかさむので、二重ガラスにしてできるだけコストを抑えたい」と要望され、なるべく低価格で資材を調達するため、国内に限らず海外にも目を向け、最終的にカナダからガラスとフレームを輸入した。その後も木材ならカナダ、大理石ならイタリア等世界中から安い材料を調達することで工事費用の削減に努めた。こうしたコスト削減への取組が次第に知られるようになり、海外ゼネコンの案件を中心に受注するようになった。
同社社長は、欧米からの資材調達や欧米企業の業務受注の契約交渉を通じて、欧米から進出してくる企業が日本の建設業者に求めるサービスが、日本の企業が求めるものと大きく異なることに気付いた。我が国の建設工事発注では、建設業者、特に総合建設業者に対して、価格、品質、工期等のリスクを含めて一括して発注する方式が一般的である。しかし、欧米ではこのように受注者にすべてを一任することはなく、工程管理、品質管理、費用管理について発注者が詳細に把握しようとする。こうした欧米流のプロジェクト・マネジメント(コンストラクション・マネジメント)に対応できる業者は、同社が創業した頃は少なく、同社はこうした他社が引き受けることができない要望を積極的に受注し、顧客を拡大してきた。

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