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製造業

中小製造業の経営上の問題点として、中小企業庁・中小企業総合事業団「中小企業景況調査」(平成13年3月調査)によると、第一に「需要の停滞」が挙げられるが(注1)、「製品ニーズの変化への対応」と回答する企業の割合も高い(前掲第211-1図)。「製品ニーズの変化への対応」に取り組むためにも、製品自体の「品質の一層の向上」を前提に、取引先に対する様々な「サービス機能を向上する」ことが重要である。以下、品質管理の在り方を全社的に見直す事例と、積極的にサービス機能の向上を試みる事例を紹介する。

(1)品質管理への全社的取組

中小製造業は、これまで親会社等からの要請で部門ごとに品質の維持・向上、納期の確実性、短納期の実現等に取り組んできたが、製造業の基本とも言える「品質管理」の徹底が必ずしも組織全体で実施されてこなかったと言われている(注2)。以下では、ISOの取得を契機として「品質」の重要性に立ち返り、部門ごとの品質管理にとどまらず経営者が広い視野で積極的に社内体制を見直し、新たに全社的に品質管理の向上に取り組む事例、自社の状況に即して公的なISO取得支援制度を段階的かつ異業種企業と共同で活用することで、組織の活性化をもたらす事例を紹介する。

<事例 ISO取得を契機に品質管理の議論を徹底して組織の活性化を実践>

電装部品製造のA社(東京都、従業員数41人)は、ISO取得活動を契機に、部門ごと、部門間で徹底的に議論を行う場を提供し、従業員の意識改革を喚起し、業務フローの抜本的な取組や人員の配置転換を柔軟に行った。定期的に議論の場が与えられることで従業員の基礎知識や業務への意識は高まり、かつISO認証取得という目に見える目標があることで、従業員の品質管理に対するレベルアップ、モチベーションの向上が実現できた。

【ISO認証取得過程での試み】
同社は、親会社からISO9000を取得するよう働きかけられたことを契機に、徹底的に品質管理の体制を強化することを目的に、ISOの取得に取り組むことにした。同社にはもともと、30年も前から社内マニュアルがあったが、中身は形骸化しており、十分にいかし切れてこなかった。このことを踏まえ、ISO取得に当たっては組織が一体になることを重視し、また既存の業務フローにとらわれず、組織の見直しも図っていくこととした。
社長は、「ISO9000シリーズ認証取得マニュアル」を従業員に配布し、自らマニュアル本がボロボロになるまで熟読した。さらに、コンサルタントの派遣を受け入れたが、コンサルタント一人の意見をうのみにするのではなく、複数のコンサルタントからの情報を取捨選択し、必要な情報を基に自社のISO認証取得の組織体制を整備した。また、ISO取得活動の全社的な取組により、従業員全員がマニュアル作成の議論に18回も参加することにつながり、部門間の軋轢の解消、他部門への理解が進み、従業員の個々の知恵が新たな組織体制作りにいかされることになった。

【ISO取得後の効果】
 ISO認証取得により、取引関係者からの信用の向上、新たな取引の開始(ISO認定証を掲げていたところ、商談が従来より早くまとまった)、クレーム数の低下等の直接的な効果の他に、1)従業員への啓発、教育、2)従業員のモチベーションアップ、3)経営者の考えの全社的な浸透等が行われ、社長はISO取得の意義は大きかったと満足している。但し、ISO認証取得後には、取得過程に比較して従業員の目標意識が希薄化している点を危惧し、継続的に部門内外での議論を進めて、組織の活性化を怠ることがないようにも留意している。

<事例 段階的かつ集団でISO認証取得を支援する公的機関>

A商工会議所では、ISO認証取得企業に単に取得費用に対して補助金を出すというのではなく、ISO認証取得までを4つの段階(入門セミナー、導入研修、導入フォロー研修、実践研究会)に区分けして、取得に向けて挑戦する過程での参加費用の半分を補助して、ステップ・バイ・ステップで企業の意欲を支援していく方法を取っている。また、研究会参加企業を集団で募集することで、様々な企業同士の間で情報交換が進み、かつ互いに刺激し合うことで競争意欲を高める等の工夫を独自に展開している。
同商工会議所は、経済活動のグローバル化に対応できる中小企業を支援するため、元気のある企業、意欲のある企業、今後更に伸びて行こうとしている企業に対してISO認証取得支援を講じている。同商工会議所は、ISO認証取得の意義は、単に国際基準への準拠と言うのではなく、企業が経営体質の改善に取り組むための重要な選択肢の一つと考えている。従来、商工会議所の指導事業活動は、一般に外部のコンサルタント等の専門家へアウトソーシングされることが多かったが、同商工会議所は自前でISO取得の段階的なシステムを構築し、まずは経営者の意識改革を促すことから始めている。
入門セミナー後の各段階ごとでは、企業とコンサルタント、さらに商工会議所の担当が共同で議論の場を持ち、企業と商工会議所が一緒になって課題の発見について解決策を模索している。また、各段階ごとでは複数の企業が集団で議論を進めていくため、企業間が刺激し合うことで意欲も高まっている。
同商工会議所のISO認証取得支援制度を活用して中小企業6社が集団でISO9000シリーズと14000シリーズを取得することに成功しており、同商工会議所は参加企業の信用度向上、社内体質改善、後継者育成等への効果に手応えを感じている。同商工会議所は、今後は、ISO認証取得に成功した企業に先導的役割を務めてもらい、意欲ある企業に対する支援体制の拡大、やる気のある企業間の交流の場の提供により、中小企業の経営支援の一層の拡大に独自に取り組んでいる。

(2)サービス機能の向上

大企業を中心とする発注先は、人員の削減や部門のアウトソーシング化を進める傾向があり、資材調達部門等が手薄になる場合が増加していると考えられる(注3)。中小製造業においても、独自の技術を磨くだけではなく、大企業等の発注先のニーズを汲み取ってコーディネーター的な機能を発揮することが重要と考えられる。中小製造業がサービス機能を発揮していく方法として、1)キーテクノロジーを持つ中小製造業が率先してのマーチャンダイジング機能の発揮、2)取引先との融合を前提とした在庫管理の徹底、3)潜在ニーズを掘り起こすための小ロット化への対応力の向上等が考えられる。以下に諸事例を紹介する。

<事例 コーディネート機能を武器に取引先企業の資材調達業務を代行、受注増を実現>

ハイテク部品受託加工のA社(東京都、従業員数68名)は、大企業等からの広範な発注に対して、受注企業間のコーディネート機能を発揮することで他社との差別化を図っている。大手企業等は、開発部品等を外注する際には材料仕入、機械加工、溶接等の工程をそれぞれ別の中小企業に発注することが多いが、キーテクノロジーを持つ中小企業に対して発注業務の責任をまとめて請け負ってもらい、発注先企業間のコーディネート機能を発揮してもらうというニーズは大きい。
同社がコーディネート機能の発揮に着目する理由には、発注者側の立場を考慮している点にある。大企業を中心とする発注者は、相次ぐスリム化により、設計部門や生産技術部門としての機能が弱体化しており、生産・開発に携わるエンジニアが不足気味にあり、資材調達体制そのものをアウトソーシングする傾向がある。例えば、大手企業が部品を外注する際には、各工程に応じて複数の中小企業に発注することが多いが、大企業にとっては発注した部品の品質が一番の関心事であり、責任の所在が一企業にまとまる方が効率的である。大企業の潜在的なニーズを読み取り、中小企業をネットワーク化してまとめあげ、他社との差別化を図っている。

<事例 在庫管理の徹底化を図り、新業態の卸・小売への販路を開拓>

清酒および焼酎製造を営むA社(福岡県、従業員数61名)は、エンドユーザーの支持を受ける新業態の卸・小売(コンビニエンスストア、チェーン店等)との融合を試みた。新業態の取引先には不可欠となる綿密な在庫管理システムの構築を図り、従来の業務プロセスのみにとらわれることなく、エンドユーザーに支持を受ける販路を確保することに成功している。
近年、酒販免許の規制緩和等により、酒類の卸・小売業に異業種からの参入が相次ぎ、新業態の躍進が目覚ましく、個人商店などの旧業態は苦戦を強いられていた。同社のような酒造メーカーは旧業態と密接な取引関係を築いてきたため、販売網は弱体化しており、新業態向けに新たに販路を開拓する必要性があった。社長は、新たな販路を開拓する際には、メーカー自らが徹底した在庫管理を行い、取引先である新業態卸・小売などと業務プロセスを一致させる必要が重要と考え、企業間の情報環境のマッチングに率先して取り組んだ。

<事例 コンクリート製造・配送手法を見直し小口需要(個人住宅等)の発掘に成功(第213-1図)>

コンクリート製造業を営むA社(北海道、従業員数60名)は、ウェットミキシングの採用(ミキサー車を製造プラントとして活用)、ミキサー車への材料供給拠点の分散化による商圏の拡大、さらにミキサー車の本部一括管理でコスト削減を行い、個人住宅や小規模の建築現場等の小口需要への対応に成功している。  同社の製造・配送手法の抜本的改革のポイントは、1)ウェットミキシングの採用、2)NP(ネットワークプラント)の開発、3)オペレーションセンターでの集中管理、である。まず1)では、それまでのセメント業界での常識にとらわれず、小ロットの取引に有効な製造法を開発して(ウエットミキシング製法では、移動するミキサー車が製造プラントの役割を果たす)、効率の良い製品の製造、配送を実現することができる。2)は、自社で独自に開発したもので、それまでのプラントと異なり、8つの小型プラントそれぞれがあたかも自動販売機のように、必要な材料などをミキサー車に提供するものである。3)はそれぞれのミキサー車のセールスドライバーが携帯電話(iモード)を通じてオペレーションセンターに現在の状況を知らせ、オペレーションセンターの社員(2名)が次に向かうNP、納品先を指示するという仕組みになっている。このように、従来の製造法にとらわれず、製造・配送手法を効率化しながら製品の品質を絶えず一定に保つシステムを開発することで、設備投資費や人件費、製造・在庫に係るコストの削減を果たした。同時に、大量のミキサー車を効率よく配車し、時間通りに商品を届ける運行システムを確立した。

第213-1図 製造・配送手法を抜本的に改革して在庫の削減と顧客サービスの充実も実現

注1  「需要の停滞」については本章第1節『自立した中小企業』に向けてを参照。
注2 米国では、トップダウンで進めることを前提に、「部分的最適化」ではなく「全体最適化」を目指し、劣悪な品質が経営に悪影響を与えるリスクを一定の数値以下になることを目指す、シックスシグマの導入が進んでいる。
注3 経済産業省「企業活動基本調査」(平成11年)によれば、生産委託を行っている企業は製造業全体の67.7%を占めており、売上原価に占める生産委託費の割合は前年度比1.2%(23.5%→24.7%)増加している。

中小企業庁ホームページより

これからの中小企業製造業

現在、世界同時不況下にあり、金融不況とも言われているため、日本の中小製造業にとっては、大きな痛手となっています。
特に自動車業界にとっては、一部の車種を除き、売上高が不振な状況であり、回復の兆しが見えても、まだまだ予断を許さない状態です。
さらに、円高株安の状態が続き、輸出事業の多い、日本の中小製造業においては、二重の痛手とも言えるでしょう。
けれども、ただ手をこまねいている訳ではありません。
中小製造業を含めた中小企業全体が、横のつながりを強化しようと、各種ネットワークを拡大しています。
情報の共有はもちろん、取引のあり方も、強固にしようとの動きを表しています。
また、それに呼応するかのように、各種公的機関が資金提供を中心にしたセーフティーネットを設置し、中小企業の救済策を施しています。

日本の中小企業は、まだまだ希望を失ってはいないと言えるでしょう。
しかし、問題が大きいことは確かです。
景気の波、円高、資金の不足はもとより、万年的に人材が不足していることも、否定できない事実でしょう。
中小企業の特徴として、一旦入社すれば、家族的な雰囲気もあり、年功序列型になりがちだと言われています。
そうは言っても、キャリアアップを望む若者などは多く、旧来の年功序列型を好まない人々も多くなっています。
もっとも、バブル崩壊後の長い低迷期から、大企業などにおいては、欧米型の成果主義を見直そうとの動きも出ています。
そうであっても、転職をすることで、自分のスキルを磨こうという働き手が多いことも間違いはありません。
そういう転職者を確保することに不利になるのが、中小企業とも言えるでしょう。
今後、日本の企業風土がどうなるかわかりませんが、色々な選択肢が増え、なおかつ、そういう選択肢が有効活用できるように、働き手も、また、雇用者側も、価値の転換を行う必要があるかもしれません。

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